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【超絶難易度】Surfaceを分解改造しよう

※この記事は とんえぼ老人部 Advent Calendar 2022 9日目の記事です

 

こんにちは。再び相生あおはです。ごめん書きすぎた。

昨日の続きです。SurfacePro(初代)を分解して改造した話を書きます。

また、Surfaceの内部考察に加え、SSDの寿命考察等も併せて行います。さらに、SSDに関する知見も共有していきます。

 

もくじ

実際のSurface内部

 

0. 事の発端

大学1年時の私Surfaceに積まれたSSDの寿命が異様に早く削られたんだけど…」

実際のS.M.A.R.T.情報一部

一般的にSSDというものは、一般的な使用をしていれば5年経ってもピンシャンする物です。私のSurfaceは大学1年時点で3年の使用歴。それなのにもう残寿命が95%なのはおかしい。私が最初に使っていたSSDより早く寿命が来ました。繰り返しますが明らかにおかしい。まだ95%も寿命が残っているといっても、ここまでSSDの寿命を削るマシンは使いたくない。改造して延命治療を施して減価償却終わるまで耐えさせて、Surfaceは引退させようと考えました。

 

1. Surfaceをいざ分解

通常、ノートパソコンなどはネジがあり、そこを開ければ誰でも普通に分解ができます。しかし、Surfaceの外見はタブレットのソレ。ネジはスタンド固定用しかありません。

結構の値段がしたSurfaceだったので、まだ使いたい。3年でお蔵入りするには高すぎた。だから何が何でもSSDを交換したい。片っ端から調べまくりました。しかし悲しいかな、2017年当時、日本人が分解した情報が一切見当たらない。んなことあるか。この際アメリカ語でもいいや。

…あった。行きついた先は、海外でも有名な分解指南サイト、IFixIt。検索から当記事に当たった諸氏には馴染み深いサイトのはず。

jp.ifixit.com

私はこのページをメインPCのモニタに常に表示しながら作業を進めていきました。なので手順はこのサイト通り。ここでは体験談を書くことにします。

ちなみに分解のしやすさは10(最も簡単)~0(不可能)に分けられており、Surfaceは分解可能な中で最悪評価の1でした。RIDICULOUS!!!!!!! もしやるって方は並外れた覚悟が必要です。

 

2016年11月19日、意を決して私はSurface分解を実行しました。

先のサイトによれば、まずは画面をひっぺがす必要があるとのこと。ネジが見当たらなくて薄々気づいていた嫌な予感は的中。これ元に戻せないんじゃないの。また、ヒートガンという、ドライヤーの超弩級強化版みたいなので画面を貼り付けている接着剤を軟化させる必要とのこと。タブレット分解職人になるわけじゃないのにその出費は嬉しくない。とりあえずドライヤーのセットモードで画面端を温めまくります。

熱を嫌うパソコン本体に熱を与えるという何とも嫌な時間。外見変化が一切ないのも相まってマジで虚無でした。一体どのくらいの熱量を与えればいいのか。

そして良い頃合い?で、わざわざこのために買ったギターピックで画面端の隙間を突き、画面こじ開けを試みます。音沙汰が無い。きみは一体どんな強力な接着剤なの。私は苦肉の策で、左手にドライヤー、左腕でSurface本体を机に固定、右手に持ったギターピックでこじ開けという、疑似的に腕を3本に増やした状態で作業を続ることで、ようやくギターピックがめり込んだんですね。そしてテコの原理でギターピックをクイッとすると、おもむろに画面端が浮き上がりました。事前知識では知っててもまさか本当に開くとは微塵も思ってなかった。だって分解魔の私が3年間開けてこなかったんだもん。まさにパンドラの箱を開けた気持ちでした。

すると悲劇は起こっていました。よく見てみると、フレームの隙間に挟まってるABS樹脂っぽい細いフレーム装飾部品(みたいなやつ)にえげつない抉れ痕がついていました。レジン等は持ち合わせてないですし加工経験が無い。もう以前の綺麗な状態にはもう戻せません。取り返しがつかないことをしてしまった気持ちでした。ドラえもんのタイムふろしきを、この時ほど切望したことはありません

そんな作業を、全周で行うわけです。もう既に80回くらい後悔していますが、痕を付けただけでSSDが交換出来てない方が嫌だったので、続行しました。

同じような作業を続けているとコツを掴むもので、手際よくギターピックを挟んでいきます。すると、気が緩んだのか、接着剤の量が少なかったのか。一か所だけ凄い勢いでギターピックが内部にめり込みました。その瞬間、ガリッ」と鈍い感覚が右手指先に走りました。……っ!!目を凝らさなくても分かります、画面端の液晶素子が損傷しました。今まで私が愛用していたパソコンが自分の手によってこんなことになるとは。この時の絶望と右手指先に走った鈍い感覚は、6年経った今でも鮮明に覚えています。分解改造作業はここで一時中断、すぐさま補修用画面を取り寄せます。

画面の型番は裏面のラベルに書いてありました。名をば、LTL106HL01-001となむ言ひける。そんな名前だったのね、改めて初めまして。そうと分かったら調べまくる。当然、アマゾンや楽天では出てきません。日本語サイトは諦めよう。そして行きついた先はガジェッター御用達、eBay。発送元は上海でした。売ってくれてありがとう、上海の顔も知らない誰か。これが私の初の海外取り寄せとなりました*1。ちなみに結局届いたのは、注文から2か月弱経った2017年1月18日のことでした。年を跨ぐとは…。

そんなわけで画面が開き、内部を初めて見ました。

Surface「…シテ…コロシテ…」

内部基板を見た私。そこにはIFixItのサイト通りの光景が広がっていました。さてこれで改造が出来る……わけじゃないんです。信じられるか。蓋を開けてもヒートパイプとSSDとかが見当たらない珍事。IFixItによれば、フレームを3つ外して基板を完全に取り出す必要があるとのこと。信じられるか?2017年時点で5台ほどのノートパソコンを改造したことがあった私には少なくとも到底信じられない。信じたくない。さらに、それらを固定しているのは3種類の特殊ネジ(トルクスネジ)であり、合計50本くらい存在するとのこと。狂気???Surfaceの設計者はユーザに何の怨みがあるんだと本気で思いました。正直、嫌がらせかと思いました。保守性の欠片も無い。無慈悲が過ぎるよ。ネジ留めとかの組み立てはどうせ手作業でしょうから、無駄な人件費が掛かってるはずです。Surfaceの値段の闇の一部かもしれませんよこれ。

きれいな基板してるだろ。ウソみたいだろ。まだ改造出来ないんだぜ。それで。

トルクスネジ用ドライバはアマゾンで予め取り寄せておいてありましたが、まさか本当に使うことになるとは。ドライヤーとギターピックの次は、T2,3,5番の細いドライバが私の相棒です。頼んだよ。もうねT2番とかは馬鹿みたいに小さいので、ネジ山が潰れないように細心の注意を払って作業を進めてたんですが、さぁ、なぁ!信じられないことに数本のネジが最初から潰れてました!さらにネジが最初から1本無い!!ウソだあっ!!!!全身の気力が抜けました。リアルで後ろに転げ返りました。ありえない、杜撰すぎる。ネジが無いのは分解しやすいから良いとしても、ネジ潰れてるのは不良品だろうが、、、

しかし、山が潰れたネジって、輪ゴムを溝に押し込みながらやさしくドライバを回すと開けられるという、いつ仕入れたか分からない知識があったので試してみました。…本当に回ってくれた。この知識を授けてくれた見知らぬ人、本当にありがとう。

2時間以上*2にわたる死闘の末、様々な犠牲の末、ようやく内部基板を完全に摘出することに成功しました。あらかじめOSクローンしておいたSSDに差し替え、補修用画面が届いたのち晴れて改造完了となりました。これでSSDの容量も128GBから512GBへ。一件落着。あれから6年経った2022年現在、マシンの改造総回数は数十回となりましたが、この時の作業は頭3つくらい抜けて本当に大変な作業となりました。タブレットはもうこりごりじゃ……

 

2. Surcafe内部を考察

SSDの寿命を謎に食い潰した容疑がかけられているSurface容疑者。実際に内部を細かく見ていくことで、犯人がユーザー側なのかメーカー側なのか審判を下してみましょう

基板表面

基板裏面

ごめんちょっとここで一旦ストップしていい?2017年頃、もしくはそれ以前に流通していたノートパソコンを分解したことがある方なら、これを見て瞬時にお分かり頂けると思います。「この作りは明らかにノートパソコンのそれではない」と。そうなんです、信じられないくらいの省スペース化が図られています。そして、ここまで分解した諦めの悪い私は、この作りを見て今までの全てを後悔しました。メスを入れるべき端末では決してなかったと。残酷なことを言うと、所詮は使い捨て端末、タブレットだったんだと。

最初から載っていたSSDサムスン電子のもの。今や大当たりどころかSSD界の権威的信頼性を誇ります*3。当時がどうだかは知らないんですけど、物としては良いはず。

CPUは、この裏面の網っぽい部位の中に表面実装されています。カタログによれば型番はi5-3317U。モバイル用途の省電力モデル。省電力ということは性能が犠牲になっています。どれくらいかというと、当時私が改造した別のノートパソコンに載せたCPU(i7-3740QM)の1/3以下。消費電力も1/3くらい。トレードオフ。表面実装じゃなかったらCPUも当然交換していました。

また、IFixItによればメモリ(4GB)は表面中央部の金属板の中に同じく表面実装されているそうです。表面実装のメリットは筐体の小型化。ではSSDはなぜ表面実装じゃないかというと、下位モデルに64GB版があったため。つまりSSD以外は両モデルで共通仕様ということ。メモリは両モデルで4GBとかいう基本的人権無視仕様でした。表面実装じゃなかったら(ry。

パーツの共通化で生産コストを落としていることが分かります。ここら辺の事情はよくある話ですね*4

バッテリは筐体裏蓋に張り付いていた

バッテリはLG化学製。高シェアだもんね。なんと全体の半分以上の質量を取っていました。CPU性能を加味すれば、バッテリ駆動で長時間使用を謳うだけの内部構造であることが分かります*5

ちなみにバッテリモジュール中央の凹みにはSSDが嵌ります。そして組み立てるとすぐ手前側に基板が来ます。テトリス状態。また、主たる発熱源のCPU等はバッテリより上に位置するよう設計されており、熱負荷が極力バッテリやSSDに来ないような設計になっていることも分かります。しかしこれ、スタンドで立てて使う前提の設計です。横置きした場合は熱が籠りっぱなし。こればっかしは小型化の限界でしょう。

ここまで見ると、ネジの粗悪さはさておき、悪い点があまり見当たらないんですよね。品質の方はというと、マザボは分かりませんが、メモリは正直どこのも変わりません。以上より、搭載パーツや設計方針は比較的良いことが分かりました。

強いて言えば無理な小型化?小型化のデメリットは皆さんもご存じでしょう、排熱性能の低下です。放熱用ヒートパイプもファンも小型化しなければいけません。そして、逃がし切れなかった熱は小さい筐体の中に溜まっていきます。実際、私がバリバリ使ってた時はファンは全開、ディスプレイはかなり暖かく、排気口付近はギリ触れるかくらい非常に熱かったです。

そもそも論、熱がパソコン等に悪い理由はなんでしょう。理由は2つあるんですね。

  1. 電解コンデンサが熱に弱い
  2. そもそも半導体が熱に弱い

1はアレニウスの法則ってやつです。これは、使用環境温度が10℃上がる毎に寿命が半減するというものです。マザボやグラボ等に搭載される電解コンデンサは名の通り、筒の中に電解液(多くはペースト状になってる)が入っています。温度が上がれば電解液中の反応も無駄に進みます。電解液も減少するそうな。つまりはそう言うことです。

2は半導体の性質です。専門外なので詳細は割愛しますが、熱が加わると電流が増えて発熱し、さらにその熱で電流が増え…の悪循環(熱暴走)になり、最悪死に至る病ということです。

このことから、SSDの寿命が異様に早く削られた原因は、2の半導体の特性によるものであることが予想されます。が、そんなに弱いものなんでしょうか。単純に書き込み量が多かっただけでは?

それではこの疑惑を、私の家に眠っている、いくつかの引退済みSSDの実際の健康状態およびデータシートの情報等と照らし合わせて検証していきましょう。

 

3. 他のSSDの健康状態から知見を得る

SSDの寿命の指標は主に2つあり、1つ目がTBW(総書き込み量)、2つ目がMTBFといった平均故障時間です。2つ目の指標はSSD以外でもよく使われる指標で、特にHDDで見かけますね*6

特に1つ目のTBWを用いた場合、残り寿命のパーセンテージと時間を計算することができます。例えば100TBWの新品SSDに1年使用で10TB書き込んでいた場合、残寿命は(100 [TB]-10 [TB])/100 [TB]*100 [-]=90%となります。また残り寿命も、1年間で10%消費したので100%消費するのには10年掛かる予想のため、あと9年という計算になります。

あくまで目安にはなりますが、これに基づいて検証します。

それでは証人SSDの皆さん、証言台の方へ。

3-1. 私が高二の時に初めて買った、初代ノートパソコンのSSD

Surfaceの前にメインで使ってた初代ノートパソコンをHDDから換装するため、意を決して学校終わりに秋葉原に行き、今は無きツクモDOS/V館に初めて立ち入って買ったんです。目立っただろうなぁ。確か1万7千円しました。震える手で諭吉さんを差し出した覚えが。とても思い入れの深いSSDです。

最近は流通していないレアパッケージ

2014年10月頃購入。512GB、SATA3、MLC(MultiLevelCell、原義2bit*7公式によればTBWは驚異の1480TBW。これ何が凄いかというと、現在主流なTLC(TripleLevelCell)の5倍以上の耐久性を誇ります(トランセンド社製TLC個体比)。理由は長くなるのでこちらをご参照ください。

chimolog.co

そんなSSDの健康状態は、10864時間使用で総書き込み量は20.7TBでした。これは恐らくOSクローンに何回か失敗したせいかもしれません。当時はSSD換装すらできなかった。

体感、結構酷使してる方

トランセンドSSDはS.M.A.R.T.情報がベンダー固有なのでCrystalDiskInfoでは多くが読み込めません。トランセンド社製のツール、TranscendSSDScopeで確認しましょう。

残り寿命は98.6%、あと7.74e5時間、なんと驚愕の88.4年使える計算です。恐るべし2bitセル。けっこう酷使したにも関わらずこの残り寿命。2bitセルがオーバースペックでコストに見合わずコンシューマ向けに流通しなくなったのも頷けます。ちょっと君は外れ値でした。

3-2. 初代ノートパソコンに載せた2枚目SSD

私が使ってた初代ノートパソコン、何故かSSDがもう一つ刺せるスロットがあったんです。いつも使ってるパソコンに謎のスロットがあったら、そこに起動ディスクを刺したくなるのが性ってもんじゃないですか。

マイナーな規格、mSATA。組み込み用とかに多いのかな

2016年11月購入。512GB、mSATA(SATA3)、1万6千円したのでMLC(MultiLevelCell、原義2bit)と思いたい。たっか。当時の私はなんて物を買ったんだ…。公式にはTBWの記載無し!MTBFは175万時間とのことですが、過酷な使い方をしたらもっと早く壊れるはず。

まぁまぁ?

これくらいが一般的な消費量でしょうか。普通に使ってれば平気で残寿命100%を維持できるみたいです。ちなみにマイナー規格とか言いましたが、mSATAのだけでも手元に4枚程あります。どうして、、、

3-3. デスクトップパソコン(メイン機)初代SSD

何を思ったか、「高級なものなら信頼性高いっしょ」と思い購入。外見からも漂う高級感。256GBなのに1万円しました。2017年時点でも高めの部類。ただ名声は高かった気がする。なんで買ったかなぁ…

思わず飾っておきたくなる外見

2016年10月購入。256GBでSATA3、どうやらMLCらしいです(公式にはその記載なし)。また公式にはMTBFのみの記載となっています。240万時間以上だそうです。

デスクトップなのにマジで全然使ってない

これはちょっと使わな過ぎる。勿体ないので持ち運びストレージとして使ってます。

3-4. メイン機 2代目SSD

NVMeっていう、速いらしいSSDが出たと聞いて買ってみました。3GB/s出て感動した記憶があります。SATA3はせいぜい560MB/sなので*8

マザボぶっ刺しタイプSSDデビュー

2019年2月購入。512GBでNVMe、TLC(TripleLevelCell、3bit)です。当時としては新規格に高品質、厚いサポートということもあってか1万7千円。はぁ。公式によればTBWは320TB。ちなみに5年保証があるので、なんと2022年現在からでも新品交換を無料で申し出ることができます。信じられない…凄い…。やろうかな

かなり酷使した

このSSDは酷使しました。メイン機で使い倒した後、持ち運びデスクトップパソコンで結構使い、その後メイン機のゲーム起動用として使用。こんな割と逸般的な使い方をしても、計算すると残寿命は91.0%で24時間365日起動してもあと27年もつ計算です。圧倒的。如何に最近のSSDの耐久性が高いかがお分かりいただけると思います。まだ普通に持ちそうなので、持ち運び用デスクトップパソコンの起動ディスクに換装しようと思います。

3-5. 2代目ノートパソコンに載ってたSSD

Surface減価償却を終え、2代目のノートパソコンを2018年の夏に購入しました。iiyamaBTOノパソ。それに載ってたSSDです。なんで手元にあるかというと、後に512GBに交換したからです。

最近のノートパソコンはもっぱらNVMeっぽい

公式のデータシートとかが見当たらなかったんですが、なんとちもろぐさんがレビューしてらした。TBWは144TBだそうです。当時としてはかなり良いもの積んでくれてたみたいです、iiyama。最近のBTOって凄いですね。

一般的なノパソ使用

残寿命は98.1%で、ぶっ続け使用でも更に約4年は使える計算です。このパソコン結局1年位しか使わなくてコレなので、その勢いで使ってれば約50年は持つ計算。先に筐体が壊れるって。余裕すぎますね。TBW少ないなぁと思ってたのに、まだ使えるってビックリ。MLC信者だった私としては「TLCもなかなかやりますなぁ」といったところ。技術の進歩は昔から目覚ましいので、価値観のアップデートは必須です。

ちなみに、弟が大学進学したのを契機にこのノパソを整備して譲渡し、私は3代目となるThinkPad*9を手に入れました。いぇい。充電端子がTypeCなのがひたすら神(こなみ)。

3-6. 持ち運びデスクトップパソコンの2代目SSD

当時の私は、「NVMeがこの値段でこの容量!?破格」って言ってぽちった記憶があります。

NVMeの波が我が家にも来た

2019年8月購入。512GBでNVMe、TLCです。もうこのくらいからTLCしか見かけなくなります*10。なのでこの表記すら省略されることも。お値段の方も9千円。今まで見てきたSSDの中で容量当たりの値段は一番安いです。トランセンドさんは品質がそれなりのものをコスパ良く提供してくれるので、ライトユーザーにおススメです。

可もなく不可なく

公式によればTBWは800TBW。ただ24時間連続稼働は想定していないそうなので、サーバ用途には向きません。一応計算はしましたが、残寿命は99.3%でぶっ続けで使ったとしても更に32年半使える想定です。マ?

この節を総括すると、たとえ酷使しても寿命は殆ど削れず、CrystalDiskInfoの健康状態も100%表示を維持できそう、ということが分かりました。すごい。え?健康状態パーセンテージと残寿命が一致しないのは何でかって?まぁまぁそれは次の節で取り上げるからさ…

 

4. Surfaceに載ってたSSDを考察

さて、ここで改めてSurfaceに載っていたSSDについて深掘りしましょう。

ちゃんと丁寧に保管してあります

型番末尾のMVは枝番みたいな感じで、Mは恐らくMicrosoftのMでしょうか。そこがD1となっているDELL向け組み込みモデルのデータシートを見つけました。仕様は恐らく同一でしょうから、そちらを見てみようと思います。TBWは記載なし、MTBFは100万時間とのこと。

Surfaceに載ってたSSDのS.M.A.R.T.

今まで6つのSSDを見てきましたが、そもそもCrystalDiskInfoの健康状態パーセンテージと計算が一致していませんでしたね。企画倒れか???

…というのは茶番。種明かしをすると、健康状態は残り書き込み可能データ量以外も考慮すべき内容があるんですね。情報が更に膨れ上がって混乱しそうだったので、ここまではあえてTBWを主に考察していました。すみません。

ご存じの方も多いでしょうが、CrystalDiskInfoはそれ以外の情報も提供してくれてるんですよね。S.M.A.R.T.情報って言います。続きを全部見てみましょう。

つづき。

よく見ると、未使用予備ブロック数(トータル)の現在値が95になっています。ここが怪しそう。この"予備ブロック"というのは、SSDでエラーが出た場所の代わりに使われる、文字通り予備領域のことを指します

折角なので、使用済み予備ブロック数と併せて、生の値も見てみましょうか。16進数ですので、使用済み予備ブロック数が88(hex)→136、未使用予備ブロック数がC38(hex)→3128となります。100-136/(3128+136)*100=95.83...となり、切り捨てると確かに95となり、健康状態パーセンテージと一致します。実は、他のSSDではここの値が全て100のままでした。すなわち、CrystalDiskInfoの健康状態パーセンテージは残書き込み量ではなく予備ブロック未使用率を表していたんですね*11*12。このSSDでは現在95でして、しきい値の10に到達して初めて故障判定となります。ですので、まだ一応普通に使えるということですね。バックアップしながらの運用で耐えるレベル。つまり、あんな決死の分解改造をするほど無かった。泣いていい???

 

5. Surface被告、逆転無罪?

それはさておき、しかしだ……。軒並み他のSSDが100%だというのに、使用時間も長いわけでもないのにこれだけ95%、5%も予備領域を使っているんです。妙じゃあありませんか?ちなみに、先に挙げた予備ブロック以外で特に怪しい項目はありませんでした。SSDって壊れる時は派手に壊れるらしいので、不具合にしては中途半端なんですよね。

…ところで2節で私が書いた一文を改めて見てみましょう。

横置きした場合は熱が籠りっぱなし。

これね、思い当たりがあるんですよ。自分で書いてて「あ……」となりました。白状すると、私は高2冬辺りから高校卒業するまで、家で横置きしてその上に教科書とか積んだりした、エアフロー最悪の状況で使ってたんです。タブレットをなんでそんな使い方?と思われると思います。なぜなら当時の私は情弱で、「i5だから高性能!」とか思ってデスクトップパソコンみたいな使い方をしていたんですね。モニタに繋いでUSBハブとか使って。

しかし悲しいかなその時使ってた初代ノートパソコン*13に"最初に"積まれてたPentiumB980となんと互角の性能、デスクトップ使用なんてもってのほかだったんですね、Surfaceに積まれてたi5-3317Uは。

つまるところ、私の使い方が悪かったんですね。ごめんSurface

また私は2節で、SSDの主たるパーツである半導体の弱点に関してこう書きましたよね?

熱が加わると電流が増えて発熱し、さらにその熱で電流が増え…の悪循環(熱暴走)になり、最悪死に至る病ということです。

 

 

 

 

 

私が犯人でした

著作・制作

AOHA

 

6. 教訓

その端末に適した使い方をしましょう。これに尽きます。

例えばSurfaceの場合、修理対応(2017年頃)は新品交換(データは消去される)だそうで。Surfaceと同じく「スリムな筐体!」が売りの端末も、きっとメンテが出来ないくらいパーツを詰め込んでるってことでしょう。熱にも、一線を画す弱さでしょう。

しかし、私はこういった端末を叩くつもりは毛頭なく、気軽に持ち運ぶ用途における絶対的な地位にいることは疑う余地がありません。繰り返しますが、適材適所、適した使い方をしましょう、ということです。

 

7. おまけ: SSDに関する新常識

7-1. 容量は大き目にしとこう

3節で挙げたSSD寿命の指標であるTBWについて。これは、SSDの容量が増えれば増えていきます。ですので、余裕をもって大容量のSSDを買っておけば、書き込みすぎで寿命が来ることも実質無くなるわけです。そうすれば予備ブロックを使うことも減るでしょうし(違ったらごめん)、信頼性が上がるということです。ですので、買い替えるならちょっと大きい容量のSSDにしときましょう。500GB~1TB辺りとか。

7-2. 良いこと尽くめのNVMe

そして、最近流行りのNVMe規格のSSDについて。この規格は発熱が多くてヒートシンク必須という観点から、ヒートシンク不要のSATAより面倒と思われがち*14。しかしそれはすごい勢いで書き込みしている場合であり、アイドル時はSATAと変わらないらしいです。それに、マザボに直接取り付けるので、ケーブル経由のSATAより応答速度が向上するらしい。

最新*15のPCIe4対応のNVMe規格SSDとか、何度見てもため息が出る圧巻の速さです。

ブラックフライデーで買っちゃいました。みんなもNVMe規格のSSDに換装して、Let's快適ライフ!

7-3. やめとこう!高速スタートアップ・休止状態・ハイブリッドスリープ!

これはご存じの方いらっしゃると思います。

チェック外しとこう。

ハイブリッドスリープの無効化

これらの特徴は以下。

  1. 起動が速い(高速スタートアップ)
  2. 電源復帰時に前の作業内容が復元されてる(ハイブリッドスリープおよび休止状態)

なんでこういう挙動になるか考えたことありますか?よく考えたら気持ち悪いですよね(?)これらを有効にしてると、各モード移行時にメモリ上の作業内容をSSDにバァアアっと書き込みます。グロすぎる、目を覆いたくなる。メモリが8GBの場合は最大で約8GB、64GB積んでれば最大で約64GB書き込みます。仮に毎日1回実行した場合、16GBメモリの場合で16 [GB/day]*365 [day/year]/1024 [-]=5.7 [TB/year]となります。これは、私の使用実績(iiyamaノパソ)である4.0 [TB/year]を優に超え、我々の通常使用以上の書き込みが発生していることが分かります。「TBWに行きつかないならいいか」と思いがちですが、小型ノパソ等の場合は今回のSurfaceのように寿命が想定より早く削られることは恐らくザラです。今はただでさえSSDの搭載で起動が速いです。存在するメリットはあるんでしょうか。無駄な書き込みは抑えておくのが吉です

7-4. 【上級者向け】ページングファイルは小さ目に!でも無効化は要注意!

ここは意見が分かれるところですね。Linuxではスワップとか言うやつで、一般に"仮想メモリ"と言ったりするアレです。

これはSSD上をメモリの一部として使用する機能。そもそもメモリには、常にえげつない頻度の読み書きがチマチマチマ…と行われています。メモリより耐久が劣るSSDがそれを担うとどうなるかは想像に容易いはずです。

じゃあ完全無効化しよう…というのは早計。メモリが枯渇した際の避難所となるためです。搭載メモリが少ないパソコンの場合、これのお陰でクラッシュが回避されているんです*16。きっと謎が解けた人もいることでしょう。特にノートパソコンはメモリが不足しがちなので、よくわからない方はノータッチが無難です*17。メモリを64GB積んでたり普段の消費率を把握されてるような方は、自己判断で平気そうなら無効化しちゃいましょう。

 

こんなところでしょう。RAMディスクとかは一般向けパソコンじゃ普通やらんので省略。

 

8. 結論

タブレットは酷使するな
タブレットは分解するな

この記事のタイトルはなんだったの…

 

それでは。

*1:2回目はケーシューのコントローラ。そしてそれが今の所私の最後の海外取り寄せ。

*2:当時撮ってた写真のタイムスタンプによる。

*3:メモリもコントローラも全て自社生産。レベルの高い合格点をオールウェイズ出してくれる数少ないメーカー。

*4:とあるグラボは廉価版と上位版で実は中身が全く同一で、表面実装セラミックコンデンサを付けるか外すかすると廉価版も上位版と同じ挙動をするみたいな嘘みたいな話を聞いたことがあります。

*5:ちなみに膨張してたので交換を考えましたが、海外からリチウムイオンバッテリの取り寄せはやりたくないので諦めました。

*6:HDDは15,000時間に達したらそろそろ変え時って感じがします。

*7:原義と書いてる理由は、2bit以上のものを総じてMLCと書くメーカーがあるからです。TLC、QLC等と書け。有利誤認表示で訴えていい?

*8:規格が怠慢すぎて理論値がボトルネックになってる状況。SATAはそろそろオワコンな気がします。時代は早い…

*9:売値15万を10万まで値引きました。5桁代まで粘ればよかった。

*10:たまに見かけるQLCはQuadLevelCell。なんと4bit。曲芸状態。少なくとも私は買いたくない。

*11:作者さんのツイートによると、この情報を開示しないSSDではパーセンテージが表示されないそうです。そんなSSDは買いたくないですね、、、

*12:少なくとも私の手持ちのSSDで検証した場合。

*13:後にi5-2430M、i5-3340M、i7-3740QMとCPUを鬼強化改造していった奴。CPUの世代が違っても命令系統やソケット形状が一致してれば載せられるんじゃないかって思います。メモリ増設は当然のこと、ワイヤレスモジュール交換してBluetooth対応にしたり、謎のmSATA端子で遊びだしたり、マジでやりたい放題でした。

*14:私はそれで一時期NVMeからSATAに回帰してました。

*15:本当の最新はPCIe5ですが、今はまだ金持ちの道楽状態なのでノーカン。

*16:ちなみに、無効化してメモリが枯渇した場合どうなるか。Windowsは頭がいいので、クラッシュする前に最もメモリを消費しているプロセスを名指しして警告してくれます。それでもなお警告を無視すると、名指しされたプロセスが強制終了されるだけで、なんとWindows自体はクラッシュしません。賢い。しかしこれは突出して消費量が多いプロセスが存在している場合。そうじゃない場合は軒並みプロセスが首を斬られるかWindowsがクラッシュするか、試したこと無いので分からないです。

*17:最悪の場合は自力でセーフモード起動したりして直すことになります。きっと分からないでしょうからページングファイル無効化はやめましょう。